みなそこすなどけい2

水底砂時計ni

短歌

2021年に書いたもの

明けて2022年になってしまいました。ことしもよろしくおねがいします。 とりあえず2021年に書いたものを一覧にしました。もしかしたらコメントとか追記していくかもです。 短歌作品 「路銀と借景」8首 「弦」第54号 うつくしくかなしくめぐる季節とか夢とか…

吉岡太朗一首評

歯みがきをしているわしは歯みがきをされとるわしにつづくほら穴 吉岡太朗『ひだりききの機械』(短歌研究社) 掲出歌を含む連作「ほら穴」の主人公は、どうやら介護の現場で働いているらしい。その文脈からすると、「歯みがきをしているわし」は被介護者の…

短歌を始めたころ(1)

「そっか、じゃあ今は君がシリウスを吹いているんだね」とK先輩は言った。 二〇〇四年の十二月、奈良は斑鳩でのことだった。寒々しい田んぼの間を並んで歩きながら、噂にだけ聞いていた同じ担当楽器のOGと、初めて会ってそんな話をした。シリウスというのはK…

「今日」のこと ――仲田有里さんの歌について(1)

OLが一人一本傘差して祭りも昨日終わって今日は 仲田有里『マヨネーズ』 交差点をみおろしているような画を想像する。信号が変わって、ぱらぱらと渡り始める数人の女の人。「祭り」はお神輿や屋台の出るようなのじゃなくて、彼女らをながめる〈私〉にとっ…

歌の声、「私」の地平

『島田修二歌集』(国文社)をひさしぶりに開いた。たとえば次のような歌に、あらためて心を動かされる。 もの書きて畢るにあらぬこれの世の浄福に似てとほき夕映『冬音』 雨降れば甕にしづけく水溜るこの確かさに生きたきものを『渚の日日』 一首目、「あら…

For You(短歌15首)

For You 「へこたれていじけた子になっちゃだめよ」(志村貴子『放浪息子』) ぼくの夢は夢を言いよどまないこと窓いっぱいにマニキュアを塗る 逃げきった鳥が青だよ 周到に荊を踏んでちかづくまでだ 通学は放浪だからどうしてもパフスリーブのあの服が要る …

Sweet Blue Flowers(短歌7首)

Sweet Blue Flowers あの坂をおりたなら海 いつか君が花降らすように泣いていた海 あくまでも大人は遠く甃はだしのゆびで撫でているだけ *ルビ:甃=いしだたみ 嵐の丘に音を失くしていつだって春の気配のなか生きてきた 愛よりもおろかな深い井戸を汲み羽根…