貧乏備忘読書録 その1
2月から今までに読んだ小説に気まぐれにコメント。
服は衝動買いしないけど本はしてしまう…
山間の過疎地で「死」を見つめる物語のいくつか。
病室の窓から差し込む夕陽の残酷に鮮やかな色。
吸い込まれてしまいそうな夜の森。星たちから受け取るおおきな安心感。
つかずはなれずの叙情が、切に迫ってくる。
灰谷健次郎『太陽の子』
ひととして、ひとのことを思うこと。考えて、行動して、何かをすること。
共有すること。その大切さ。
どうしようもない悲しみからこそ、掬い上げなければいけない。
言葉にすれば陳腐な綺麗ごとを、こうまで身に迫って言われて、かなりはっとした。
梨木香歩『からくりからくさ』
再読したい作品。ちょっと主人公たちにまつわる先代の人物たちと、そのエピソードが把握し切れなかったので、乗り切れない部分はあった。
そんなの無いだろ、と言いたくなりそうな「つつましやかさ」みたいなものを、リアルに描いている感じ。
でも、結構感情の揺れは激しい。
それらが矛盾していない。
はやみねかおる『僕と先輩のマジカル・ライフ』
ごくごくライトな推理もの。宮部みゆきの「ステップ・ファザー・ステップ」みたいな感じ。
立ちまくっているキャラと、転回のスムーザさでさくさく読める。
収録話の中では『河童』が秀逸。
だいぶあっさりとした印象で、一冊だけれど長さ的には中篇といってもいいくらい。
ひとの、ひとへの志向は、でもこのくらいあっさりしていて、だけど深いのかも、と思う。
すごくいいと思うのだけど、まったく感情移入できない。別にそれが悪いというのではなく。
感情だとか情動だとかを直接ではなく、そこから一歩ひいたところから世界の空気として見せているように感じた。
川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』
今年上半期(に読んだ本)ベスト3確定。
『ノルウェイの森』が男のうだうだを男の側からうだうだ切り取っているのに対して、こちらはニシノユキヒコというひとりの男にうだうだされている、あまたの女性の視点から切り取られた連作短編。
そんなことばかり言うのは「新興宗教みたい」だけど、でもやっぱり生きていくのは「淋しい」のだ、ということ。
そしてニシノのダメ男さ、が自然と、実感を伴ってにじみ出る。とにかく秀逸。