みなそこすなどけい2

水底砂時計ni

また踊り場で

 今の私は想像する。部屋で眠りこける彼女は叡山電車にかたかた揺られ、夜の町を抜け、私の知らない遠くへ出かけていたのではないか、そしてそこには野原と森が広がって、明るい日差しが降り注ぎ、偉大なる太陽の塔が彼女を待っていたのではないか、と。

 今更そんなことを切なく思う私ではないが、しかし、やはり少し切ない話ではないかと思って、私は凍ったアスファルトをとんとんと踏み鳴らした。

(森見登美彦太陽の塔新潮文庫、p.171)

連休中の京都駅は予想通り混んでいて、カフェ・デュ・モンド前のオープンスペースにすわる場所を見つけられたのはついていた。

向き合って座ると、その人との間でいかに多くの行き来があったか、それを思い知る。物や言葉や気持ちや、あらゆるものの。

目を見るたびに、刻印された歴史を確かに捉える。

たぶん今は、それぞれがまだ、それぞれの階段を上らなくてはいけない時期なのだと思う。

大丈夫。また同じ踊り場で会える。

改札を抜けてホームを歩く彼女が視界から消えないうちに、僕は身を返した。

京阪電車のシートに座ると、どこか心地よい疲労が全身に押し寄せた。

出町柳駅の改札を抜け、飲み干したお茶のペットボトルを捨てる。

階段を上って外に出ると、空がまた少し広がっていた。