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みなそこすなどけい2

水底砂時計ni

19th文フリあとがき

創作とか

星の死は遠くたやすい iPhoneの明かりにかわりばんこに触れる  (笠木拓「前日譚」/「サンカク」)

 11月24日の第19回文学フリマに寄稿したもののあとがきを脱線しながら書いていきます。備忘備忘。ほんとは春の文フリで出した本、書いたものたちの紹介とあとがきも書きたいのだけど、新鮮なうちに近い過去のことについて書いとく。
 今回は新刊もないしじぶんたちのサークル(金魚ファー:@)のブースは出してなくて、初めて店番なしの文フリだったのですが、見て回るほうもまあ疲れました。店番してると向こうから勝手に会いに来てくれるので省エネであることだなあとしみじみ。でも自由にいろんなとこに行って本買ったりご挨拶したりお菓子ばらまいたりできて楽しかった。あ、あとブースに配置番号でっかく書いてあるとありがたいな、なぜなら事前にチェックしておいたサークルを見つけやすいからだー! とお客さん目線ですげー思ったので覚えておこう。
 それでは以下、あとがきです。

BL短歌合同誌『共有結晶』vol.3

 それまで存在は知ってたけど一年前に前号vol.2を手にとって、こんなにすみずみまで神経の行き渡った本!!すげー本じゃんって衝撃を受けて、その後いろいろご縁もあって書かせていただくことになりました。
 BL短歌合同誌「共有結晶」@

短歌連作10首「うたかた」

 まだぜんぜん少ないBL読書経験に照らしてみても僕の場合めっちゃ受け側に自己投影してそれはもう処女こじらせた感じに胸を痛める傾向にあって、だからBL短歌連作を作るってなったときにも萌えるかどうかとかそういうこと考えてられなくて、そんなわけで完成した作品はうわべだけみるとあんまし実社会で生活している僕とは関係ない設定なのだけれど、いままで書いた中である意味いちばん私小説的なものになりました。身も蓋もない要約をすると「ノンケの友人に叶わぬ片思いしててつらい」っていう連作なんですけど、ぜんたいにピアノと、それから人魚姫のモチーフを散りばめていて、歌を並べていくうちにしぜんとその横糸は決まった感じで、タイトルも安易ともいえるシンプルさで「うたかた」に決めて、そうしたら結果的に「美樹さやか」という固有名詞の入った歌も作って入れることになって、すごくうれしかったです作者は。あと、普段も僕は「僕」という一人称を使ってるけど、普段使ってるからといってそれが素のじぶんを反映しているわけではけっして無く、「僕」と口にしたり書いたりするときにかなりの程度演技しているわけじゃんってこれを作りながら気づいておもしろかった。

特集「悪」

 上にも書いたように萌えるかどうかっていうアプローチをあまりできなくて、「悪」に萌えるってなるとさらに感覚としてしっくりこなくて、うーん悪とは……悪とは……と思い悩みました。テーマ詠「悪」のほうは最初、「うたかた」に入っているあのときふたりでみた猫って義賊だったねとか言ってるような歌を作って、それにしようと思ったんですけど、鏡の会(という歌会)に出してみて作者解題のときにテーマ詠「悪」で作ったんですよーって言ったら珂瀾さんに「ぜんぜん悪じゃないじゃん、義賊は悪じゃないじゃん」みたいに言われて、それもそうだよなーと思ってでもじゃあ俺は悪ってなんだと思ってるんだろうとふたたびうんうん唸っていると、頭の中に「なすな恋」っていうかつて読んだ歌の初句がリフレインしだして、あ、「なすな悪」はどうだろう、という電波を受信。悪の側から詠むのではなく悪に対して呼びかければいいのでは、ということでああいうかたちになりました。その本歌というのが〈なすな恋 冬なかぞらに愛しきを魂匣(たまばこ)のごと硝子泡だつ/山中智恵子〉です。悪に対して呼びかけるとか言いつつ、じつはこのよびかけってけっこう相手をじぶんの思い通りにしようとしていて、そういう意味では呼びかけてる側こそがかくれた「悪」なのかなと思わなくもないです。蛇足だけど『輪るピングドラム』の高倉冠葉・晶馬兄弟のイメージもちょっとあったりなかったり?
 「悪」の短歌から小説への解凍! 解凍したい「悪」の短歌を見つけあぐねて参加締め切りを逃したのですが、原稿提出締め切りの直前にたまたま読んでいた国文社の『寺山修司短歌論集』に〈月見草の萼(がく)を破りて咲かしめし一(ひと)ときの悔(く)いまだなまなまし/五島美代子〉を見つけて「あ、これで書こう」と思いたち、名古屋行きの高速バスのなかから「今から参加できますか……?」っていうDMを企画とりまとめの麻子さんに送りました。でも書くと決めてから原稿提出まで(締め切り破ったくせに)(重ね重ねごめんなさい)短くて、これもうんうん唸りながら書いて、じつはその後こわくて読み返せてないです、反省点多いです、わー! という気持ちでいっぱい。解凍、またリベンジしたいです。あとタイトル「たやすい花」なんですけど、「たやすい」はことしの自分内流行語で、だからってタイトルにしちゃってちょろいのは俺じゃん、はずかしい。

 

性別越境アンソロジー『兼ネル』

 「醒めない蛹、枯れない鏡」という題で散文を書きました。宮野ともちかの漫画作品『ゆびさきミルクティー』を取り上げて、女装(と性欲とかつがいとかとの関係)について書きました。本の目次には評論って書いてあって、それもたぶん正しくて、エッセイかと言われると違う気もするし、でも個人的な思い入れとか入りまくってるし、宣伝のときも自分では「散文」とだけ紹介してた。最初は性別越境作品のレビュー枠で参加しようと思って、でもこの文字数で書きたいこと書ききれる気がしなくて、長めに書かせていただけることになったという経緯がありまして。長めに書くとなったときに、複数作品に言及しつつ書こうかなとも思ったものの、でもあまりにもこの作品に思い入れがありすぎて一点突破で行くことにしました。とはいえ、物語や登場人物についてコンパクトに紹介をおりまぜつつ書かなきゃならないうえに、前半部は作品の登場人物に宛てた手紙だし、しかもその手紙の差出人までもがまたべつの出所を持つ架空の一人称*1とかいう事態になっていて、一見さんに優しくなくなっちゃったなーというのが気がかりです。でも内容については10代のころからしぬほど考えつづけたテーマで、『ゆびさきミルクティー』はその思い悩みの軸になった作品で、ずっとこれに関するなにかを書かなければと思っていたので、長年の念願叶って書いた今回のこの文章には愛憎ぐちゃぐちゃないまぜにとにかく熱だけはつめこんだのでした。
 この本もまた装丁から中身からそうとうに熱くて分厚くて重くて鮮烈ですごい本です。参加できてほんとうによかった。
性別越境アンソロジー『兼ネル』@

「サンカク」

 短歌連作20首「前日譚」を書きました。「サンカク」は短歌同人誌「一角」@さんの新刊です。寄稿しているメンバーはそのつどべつべつ。この作品にかんしてはあまりつけたすことはありません。ことしの春の文フリのあと、親友と「これからだよ」「これからだね」ってうなずきあったときの気持ちで作った連作です。だから「前日譚」。これから。

*1:すずこさん。春の文フリで出した『金魚ファーラウェイ』を参照してくださるとめっちゃうれしい