みなそこすなどけい2

水底砂時計ni

散歩のつづきがいい(2014.09.09)

 散歩してそのまんまみんなに会いに行きたい。電車とかバスとか取らなくても乗らなくてもちょっと遠くのコンビニ行くくらいの遠さで会えちゃったりしたい。ケータイも家に置いてきたままで小銭入れだけ持って自販機でジュース買って飲みながら歩いて飲みほした頃に会いたい人の住む街に自分がいつの間にか立ってたらいい。なぜなら散歩には目的はなく、したがって散歩とはなにかのための手段ではなく、会いたい人に会うのも同じだからだ。団地の緑色のあかりを金網越しにながめながらそのままてくてく一緒に歩きたい。きつねもたぬきも出てこなくてもいいから空の高いところを飛行機が点滅しながら過ぎてゆくのを見送ってうろ覚えの歌を歌いたい。金のくちばしが出そうな気分に大盛り上がりして、でもしずかに大盛り上がりして、実際にはただのくちばしで、でもそれを持っていれば朝が来ないままかたわらの疎水にも終わりが来ないままずっとこのままでいられる確信だけを共有して共犯していたい。最後には歩道橋の上でふた手にわかれて気がついたらひんやりとした明け方に自分ちの布団で目を覚ましてもういっかい眠りに落ちたい。そのあとりんごを剥いて食べてくちが濡れてパジャマのままいい一日だったと日記を書いて着替えて街に出て人ごみのなかを一人で泳いで喫茶店の窓から交差点を見下ろして手紙を書けたならいい。ここまでぜんぶを千年くらい繰り返したら、そのあと電車の切符を取って電車に乗ってあらためて会いにいきたい。それだけ。って秋に思います、メリー良夜。(2014.09.09)