みなそこすなどけい2

水底砂時計ni

しらんがな(2014.09.21)

 香林坊大和の地下食料品売り場をひさしぶりに訪れたらぐるぐる回る色とりどりの中から好きなのを好きなだけ選んで買う量り売りのお菓子売り場がまだあって、でもべつにお菓子のラインナップをちゃんと見分するでもなく一瞥して通りすぎちゃった。あれむかし祖父母がこっちに来たときとかによく買ってもらって、いろんなの選べたはずなのにほかのなにをおいてもなぜか毎回必ず選んでたのが棒状の「三色ガム」とかいうデパ地下でわざわざ買ってもらうにしては絶妙に世俗っぽくキッチュなやつだった。三色ガム、ほかのところで売ってるの見たことないけどでも別にわざわざ大和の地下で買ってもらわんでもよかろうと思わずにはいられないアイテムだし、味がめっちゃ好きとかじゃなかったんだけど、ていうかガムとかすすんで食べたためしなど無かった子ども時代なのだけれど、なぜか絶対それだけは欠かさなかった。選んで一緒に買ってもらったほかのもっとちゃんとしてて美味しかったり見た目も華やかだったであろうお菓子の記憶まじでまったくない。だからどうしたもこうしたもないんだけど今日通りがかって三色ガムのことをふっと思い出したっていうそれだけでした。三色の歯磨き粉あるでしょ、あれの中身があの大きさでそのままガムになったみたいに考えてもらえればと思います。色は赤・青・黄色だった。この得体の知れなさ。三色ガムよどうか宇宙が滅ぶまで香林坊大和の地下でぐるぐる回っていてくれ。とかいって無責任に子どもの頃の記憶をゴーラウンドさせとくために三色ガムの実在を今日この目で確かめるわけにはいかなかったのだな、といま思い至りました。見たら確定しちゃうものね。三色ガムがあの場所で回り続ける可能世界と、そんなものはもうとっくになくなっている可能世界とが分岐したままでいてほしい。よろしくアワ・ユニヴァース。(2014.09.21)