2016年末に奈良を旅した日記1
絵巻物右から左へ見てゆけばあるとき烏帽子の人らが泣けり
/中津昌子『風を残せり』
2016年の終わりに奈良へ行ってきました。
12月30日、新幹線とサンダーバードを乗り継いで西へ。電車の中ではうとうとしたり「三人姉妹」を読んだりしていて、山科あたりで読み終えて(わたしも生きて行くのだわ……)としんみりしながらホームに降りる。しんみりしていたら棚にリュックを忘れました。駅の通路でコインロッカーを目にして、(あれ? 大きい方の荷物は?)と気づいて慌てて引き返したらすでに列車は出たあと。駅員さんに聞いてとりあえず忘れ物センターに電話をして、とりあえず京都で待機するかー、地下鉄とかで行けるところ……と思い直す。
朝、最寄り駅まではちらほら雪が降っていたのに、京都は気持ち良く晴れている。北陸のたまたま晴れた冬の日とは空の高さと青さがちがう感じ。乗り換えるはずの烏丸御池でまちがえて降りてしまい、御池通を東へ歩いていたら忘れもの見つかりましたの連絡がきてほっとする。とりあえず三月書房へ。
歌集を一冊買い、京阪三条まで歩く。京都の冬はひだまりのある冬。ひだまりのある冬があるなんてこの街で暮らすまで知らなかった。八幡市駅を通過するだけで胸がちりちりする。京橋でJRに乗り換えるとき、一瞬だけ大阪の地上を横切る。
大阪駅の忘れ物センターのおじさんは無愛想だったけどぶじに荷物は帰ってくる。中身について具体的に細かく質問された。そりゃそうか。
どこ駅かもう思い出せないけれど乗り換えて近鉄で奈良へ。2ヶ月くらい前のじぶんが年末だからいい宿に泊まりなよ、と予約してくれた小さな良い宿はグッドルッキングルーム*1でしかもひとりだけどツインだった。日が沈まないうちにぜひとも散歩にいかねば! という気持ちで奮い立ち、まちなかのほうへ歩く。黄昏の猿沢池が魔法みたい。
奈良は京都より建物とか人とか風景の中のいろんな要素が密集してなくて、ぼんやり歩いていてもたのしいので良いなあとおもう。古本屋に入って文庫を一冊買う。近鉄奈良駅のほうへ移動して後輩氏とサシ忘年会を執り行う。『こいいじ』の話が通じるのをいいことに「でもわたしは人の気持ちがわからない冷血人間だから……」を連発してしまう。奈良漬入りポテトサラダとかがおいしかった。居酒屋を出てカフェで閉店までの30分だけパフェをつつきながら延長線をする。駅前で別れて宿まで20分ちょっとをゆっくり歩く。ペットボトルのお水がおいしい。
今年は仕事も変わってふたたびの一人暮らしになったけど、大学生だったときほど静かな時間やボーバクと過ごす時間は取れない。そりゃそうか。でも稼いだお金で旅をして、その旅先の奈良でボーバクとできているのはうれしい達成ではあるし、とはいえやっぱり隙を見つけてはボーバクと過ごすぞーと決意を新たにしたのだった。(2日目につづく)