みなそこすなどけい2

水底砂時計ni

人質だったのは誰か  ――アニメ「STEINS;GATE」感想メモ

 シュタインズゲート(アニメ)を一気にみてしまったので、考えたこととかをすこしメモしておきます。

 

 ・まゆしぃは自身のことを岡部の人質だと言う。それは正しくて、けれど逆はもっと正しい。岡部こそがまゆりの人質だった。

 

 ネタバレも含むので〈続きを読む〉からどうぞ。

 

・幼なじみの2人は「人体実験の人質」という設定=口実=契約=誓い……に生きる意味を縛られ、呪われつづけてきた。

・まゆりの死を回避するべくなんども繰り返し、そのたびに失敗を積み重ねるタイムリープは、岡部がまゆり(の死)の人質であることをまざまざと見せつける。

・けれど、岡部が紅莉栖と出会い、信頼しあうバディになっていくことで、呪いをすこしずつ解いていく。

 

・岡部とまゆりだけではない。ラボメンはみんな何らかの意味で自分が人質であるという「設定」に縛られ、呪われている。

・紅莉栖は父親の、ルカ子は性別の、フェイリスは父親の死の、萌郁は自尊心の、鈴羽は未来と使命の……。自分だけの力では覆せない何かに、アイデンティティを囚われてしまっている。

 

・ダルだけはほかのラボメンとはすこし違うように見える。劇中を通してトラウマやコンプレックスが深刻な形で開示される場面がほぼない(はず)。だからといって「無い」とは限らないけれども

・「スーパーハッカー」であるダルはラボに居ながら外部と行き来する通路を穿つことができる、タイムマシンの実用化を果たす、などが示唆的。岡部がラボの入口でダルが出口、みたいな。

 

・β世界線に戻り、一度紅莉栖の救出に失敗した岡部を「おかりんががんばらなきゃ」と奮い立たせるまゆりを見て、最初はあまりに酷じゃないかと思った。

・でも、〈まゆりの死〉に縛られていた呪いを解消した今、岡部は別の動機で生きることを選び直さなければならない。そのために勇気をもって一度手を離し背中を押せるのはまゆりしかいない。

・紅莉栖もまゆりも生き延びる世界こそが岡部とまゆりの新しい契約で、呪いへの反逆なのではないか。

 

・まゆりが岡部から自立すること/岡部を自分から解放すること、は岡部−紅莉栖のラインに比べてあまり直接的には描かれない。

・けれど、最後に〈岡部が連れてきたのでない形で〉萌郁と出会って友だちになる、みたいな描写があるのがすごく印象的で、すごくうれしかった。

・だからわたしはあの短いシーンがとてもとても好きだな。